漢方専門薬局 宮崎厚仁堂

 

漢 方 散 歩 道 12

夏と膀胱炎1・・・初期消火はお早めに!

 発汗量の増える季節、尿量が減少し膀胱炎になることがあります。尿量が減少するということは、尿が濃縮された結果です。膀胱粘膜は熱を帯びやすく炎症しやすい環境になっています。ある意味、細菌の培地と化すわけです。
 膀胱炎を発症させる原因の微生物を「起炎菌(きえんきん)」と言います。起炎菌となる細菌はたくさんありますが、現代は衛生面の環境がよいため、特殊な細菌が起炎菌になることはあまりありません。多くはパンツの中の大腸菌です。大腸菌は「常在菌(じょうざいきん)」です。我々人間は普段から共存しています。当然、ふつうは感染したりしません。では、どうして常在菌の大腸菌に感染してしまうのでしょう。
 疲労が一因となっています。膀胱粘膜の抵抗力が落ちているため感染してしまったのです。つまり、「膀胱粘膜の夏ばて」が原因となります。
 こんな時には、五淋散(ごりんさん)という漢方薬をお試しください。膀胱炎の初期消火にはとても便利な処方です。


(1)膀胱炎の3大症状

頻尿
残尿感
排尿痛

 どれもいやな症状ですね。とくに「頻尿」と「残尿感」は表裏一体です。スッキリでない(気がするから)から、すぐにトイレに行きたくなるのです。膀胱炎は膀胱粘膜の炎症ですから、炎症が尿道に波及すると「排尿痛」を起こします。極端な疼痛や尿道口から膿が排出されるときには、大腸菌以外の菌が起炎菌になっているかもしれません。泌尿器科や婦人科を受診しましょう。
 泌尿器科や婦人科ははずかしくてと言う方が、今でも結構います。こんな方には皮膚科がおすすめです。
 

(2)水をたくさん飲むように!

 こんなふうに病院や薬屋さんで言われたことはありませんか。これはたくさんの水を飲むことによって、膀胱内の雑菌を洗い流す効果をねらったものです。どんどん尿と一緒に雑菌を排出すれば菌の増殖を制限できます。
 ところで膀胱炎の薬そのものに利尿効果もあれば一石二鳥と思いませんか。じつは五淋散をおすすめする理由はここにあります。利尿効果があり、抗菌、抗炎症作用を有する漢方薬五淋散なのです。
 

(3)おすすめの民間薬

 ウツボ草クチナシの実です。それぞれを10gずつ、水600ccで20分ほど煎じたお茶を1日分として服用します。毎年夏になると膀胱炎になる方は予防薬としても効果的です。



 最後に大事なことをひとつ。通常膀胱炎では発熱はしません。もし発熱があれば腎盂炎かもしれません。覚えておいてくださいね。

(2001年8月)


夏と膀胱炎2・・・くり返す膀胱炎!

 抗菌剤や抗生物質を服用するとよくなるが、すぐにまた再発する。悩んでいらっしゃる方は意外なほど多いものです。抗生物質などで細菌をやっつけても、すぐにまた感染してしまうわけですから、パンツの中の大腸菌にさえ勝てない抵抗力に問題があります。
 つまり、膀胱粘膜の抵抗力を強化しないと、いくら常在菌である大腸菌をたたいても、再発することになるわけです。


(1)「くり返すタイプ」の特徴

排尿痛はほとんどない!

 並の抵抗力があれば感染しない程度の弱い菌に感染しているわけですから、炎症もひどくはありません。腰痛や下腹部痛はよく伴います。もちろん激痛ではありません。

尿色はあまり濃いくならない!
 炎症自体が軽度なので極端な膿尿になることはありません。暑さによる抵抗力の低下だけが原因ではなく、エアコンなどで下半身が冷えて抵抗力を落とすことが原因となることもあります。こんな時は、むしろ普段より薄い色の尿になります。

抗生物質で胃腸障害!
 抵抗力が弱く膀胱炎になりやすい方は、胃腸も弱い場合が多くみられます。胃腸障害のため抗菌剤や抗生物質が長く使えない結果となります。


(2)解決方法

抗生物質などの胃腸障害はない方

 漢方薬との併用が効果的です。併用により抵抗力が回復するため、再発という悪循環を断ち切るために、是非お試しください。併用する漢方薬は当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)です。

胃腸障害で抗生物質がつらい方
 2種類の漢方薬の併用で解決しましょう。服用する漢方薬は当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)五淋散(ごりんさん)です。



 すぐに膀胱炎になるとおっしゃる方の中に「膀胱神経症」といって、じつは膀胱炎ではない方もいます。頻尿、残尿感があるため、ご本人は慢性の膀胱炎と固く信じています。特徴がいくつかあります。
 日中は頻尿なのに夜間排尿がない、飲酒や趣味などでリラックスしたときには症状が出ない、などです。もちろん膀胱炎の薬では効きません。膀胱神経症は自律神経の過剰反応とお考えください。
 
(2001年8月)


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