漢方専門薬局 宮崎厚仁堂

 

漢 方 散 歩 道 7
女性とストレス1(イライラタイプ)
 ストレスが原因で体調不良をおこすことはよくあります。また体調不良がストレスを助長することもあります。とくに女性は、月経、妊娠、出産などと、もともと生理的にホルモン分泌に変動をきたしやすい身体構造になっています。女性ホルモンのエストロゲンには、抗ストレス作用があります。自律神経失調症や更年期障害と診断され人の多くはエストロゲンの分泌不足がおこっています。このためストレスにもたいへん弱くなっています。たわいないことにすらイライラしてしまいます。こんなとき「気のせいだから、あまり気にしないように」というアドバイスほどありがたくないものはありません。
 漢方で「気のせい」といえば一大事です。なぜなら「気のせい」の「せい」を漢字にするならば「仕業」とすべきだからです。漢方の概念では「気」をとても大切に考えます。
 そこで「気の仕業(せい)」によって、ストレスを受けやすい身体になっている女性におすすめの漢方薬があります。加味逍遥散(かみしょうようさん)です。
 

(1)処方名の意味

 加味逍遥散の「加味(かみ)」とは、「薬物を追加する」という意味です。中国の宋代に逍遥散(しょうようさん)という漢方薬が考えだされました。約500年後の明代に、新たに2種類の薬物を追加し、加味逍遥散が創製されたのです。
 「逍遥(しょうよう)」といえば、明治の文豪「坪内逍遥」を連想されるかもしれません。逍遥とは、「のびのびと快適に過ごす」という意味です。ストレスなく快適に暮らせるようにとの願いが処方名にこめられています。  
 

(2)イライラタイプ度チェック

 a.ため息をつくことが多い

 b.食欲にムラがある

 c.便通にムラがある

 d.生理不順

 e.生理前になると下着がふれるのもいやなほどお乳がはる

 f.ガスがうまく排出できずお腹がはることが多い

 g.上半身(とくに顔)が急に熱くなることがある

 これらは精神的なイライラ感が身体に反映された症状です。3つ以上該当する方は加味逍遥散をお試しください。ストレスをなくす努力も大切ですが、ストレスに強い身体づくりをすることの方が賢明です。  

(2000年11月)
 

女性とストレス2(不安タイプ)

 ストレスを受けるとだれでもイライラするわけではありません。悲観的になってしまうタイプもあります。つまりドキドキと不安になってしまうタイプです。このタイプの特徴はストレスがすぐに体調不良を引きおこす点です。さらに体調不良がストレスを助長することも顕著です。
 

(1)「できればやめたい」安定剤

ストレス→体調不良→不安感←ストレス←体調不良

元気がなくなる

自律神経失調症、更年期障害、不眠、不安神経症・・・


 このようなタイプの方は、病院でいろいろな検査を受けても、これと言った異常が見つからないことがよくあります。結果的に安定剤の処方を受けたものの「これでいいの?」と思いつつも何となく安定剤の服用をつづけることとなります。服用をつづけること自体にも不安感を覚えます。
 おすすめしたい漢方薬は加味帰脾湯(かみきひとう)です。新薬の安定剤にすぐに取って代わるわけではありませんが、「できればやめたい」安定剤からの脱却を助けてくれます。
   
 

(2)不安タイプ度チェック

 a.貧血傾向がある

 b.知らない間に青あざができやすい

 c.食欲が低下しやすい

 d.生理がダラダラつづきなかなか終わらない

 e.動悸を感じることがある

 f.声が小さい

 g.虚弱体質だと思う

 もし3つ以上に該当するならば加味帰脾湯をお試しください。身体的にも精神的にも効果的にケアしてくれる漢方薬です。
 よく似た名前で「帰脾湯(きひとう)」という漢方薬もあります。前回のイライラタイプで加味逍遥散をご紹介しましたが、こちらも「加味」が大切な働きをします。実はイライラ感を軽減する薬物です。不安タイプとはいえ、全くイライラしないかといえばそんなことはありません。加味帰脾湯の方が現実的な処方と言えます。  

(2000年11月)
 

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