葛根湯(かっこんとう)は、漢方のかぜ薬として有名です。名前くらいは聞いたことがあるかと思います。ただ、どんな「かぜ」にでも効くわけではありません。簡単にポイントをご紹介しましょう。
(1)これだけは、確認しましょう
・かぜの初期であること
かぜをひいて、1日たつと、もう葛根湯の時期を過ぎていることが大半です。 |
・さむけがあること
かぜをひくと、最初さむけがして、気がつくと発熱しています。すでにさむけがおさまり、熱だけなら、たとえかぜをひいて数時間しか経っていなくとも、かぜの初期ではありません。葛根湯では治りません。 |
・胃腸型感冒でないこと
・咳がないこと
咳があるときには、もっと効果的な漢方薬があります。 |
・1〜2回の服用で効果があること
うまく効くと、1服で効果を期待できるのが葛根湯です。もともと、3日も4日も続けて服用する漢方薬ではありません。 |
(2)葛根湯を効かせるコツ
・粉薬を選ぶこと
もちろん、煎じ薬でもよいのですが、煎じている間にかぜの初期が終わってしまうかもしれません。粉薬といいましたが、正確には「エキス剤」です。煎じ薬をフリーズドライして、顆粒や細粒状にした製剤です。固めて錠剤にしたものもあります。
なぜ粉薬かと言えば、「お湯に溶かす」ことができるからです。お湯にとかしたあつ〜い葛根湯を服むと、じわーっと汗が出てきて楽になります。 |
・ショウガを追加すること
葛根湯の中には、もともとショウガが入っています。粉薬のように製剤化すると、いまひとつ、ショウガのピリッと感がありません。発汗のためには、このピリッと感が大切です。家庭にあるショウガを少しすって追加しても構いませんが、チューブ入りのものでも、一向にさしつかえありません。 |
・「おかしいな?」と思ったとき、すぐに服む
一番大切なことです。葛根湯で効く時期は、すぐに過ぎてしまいます。 |
(2000年6月)
かぜの中期〜後期
「おかしい、おかしい」と思っているあいだに、かぜは初期の状態を過ぎてしまうものです。このようなときに便利な漢方薬を、ひとつ上げるとしたら、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)です。簡単にポイントをご紹介しましょう。
(1)こんなかぜに
・身体がだるい
かぜをひいて、少し時間がたっているため、身体にもダメージがあり、だるさが出てきます。 |
・微熱がつづく
体力の低下とともに、抵抗力も弱まっています。結果的にダラダラと微熱がつづきます。柴胡桂枝湯は、かぜをやっつけるとともに、体力を補ってくれます。 |
・さむけはあったとしても軽度
かぜの中期や後期でも、ひどいさむけがあれば、別の漢方薬が必要です。 |
・かぜ気味がつづいている
かぜをひいたのは間違いないのに、体温を測っても熱はない。でも、何となくスッキリしない。こんな時にも柴胡桂枝湯はよく効きます。 |
・かぜで食欲が落ちた
(2)こんな時にも使えます
・感冒後の体調不良に
かぜは治ったが、どうも身体がスッキリしないときに、柴胡桂枝湯は効果的です。2、3日くらい服用するとよいでしょう。 |
・妊娠中でも
漢方薬なら妊娠中でも、すべて服用してよいわけではありません。その点、柴胡桂枝湯なら安心です。 |
(2000年6月)
梅雨のかぜ
梅雨の季節になると、高温多湿になり、胃腸型のかぜをひきやすいものです。胃腸機能の失調により、身体の水分代謝も悪くなるため、ムカムカしたり、下痢をすることもあります。このようなときに便利な漢方薬は、五苓散(ごれいさん)です。
こんなかぜに
・身体が重だるくムカムカする
・頭痛がありムカムカする
・下痢
軽い軟便のこともありますが、ひどいと水様性になります。便臭は、それほど強くありません。 |
・のどの渇き
ムカムカしたり、下痢があっても、ふだんよりのどが渇きます。 |
・尿の出が悪い
飲んでいるわりに、排尿回数が少なかったり、一回量が減少します。 |
五苓散は、かぜ薬としてだけではなく、「ふだんから、のどが渇きやすく、むくみやすく、お腹をこわしやすい方の胃薬、頭痛薬」としても、効果的な漢方薬です。
同じタイプの漢方薬を、もうひとつご紹介しましょう。症状は五苓散とよく似ていますが、悪寒発熱と同時に、臭気の強い下痢をともないます。このような場合にはカッ香正気散(かっこうしょうきさん)※が有効です。
※「漢方散歩道」は、多くの方に「漢方のよさ」を知っていただくことが目的です。このため、できるだけ簡単に手に入る漢方薬を紹介します。解説の都合上、やや入手しにくい漢方薬もご紹介することがあります。ご了承ください。もちろん「漢方専門薬局」にはあります。
(2000年6月)