漢方専門薬局 宮崎厚仁堂

 

漢 方 散 歩 道 2
寒熱(かんねつ)
 漢方には、寒熱(かんねつ)という考え方があります。処方を検討するのに大切な概念ですが、少し知っておくだけで、普段の生活にも役立ちます。簡単に言いますと、病気や体質が「冷え」の傾向にあるのか、「炎症」の傾向にあるのかを鑑別する考え方です。
 

(1)寒(冷え)傾向の人の特徴

・寒がり
・手足の冷え
・冬が苦手
・温かい飲み物を好む
・冷飲、冷食でお腹をこわしやすい
・尿の色が無色だったり、無色に近い
・舌(べろ)の色が薄い

 身体が冷えると、尿の色は薄くなります。汗や呼吸による水分の発散が減少するためです。冷えた記憶もないのに、ふだんから尿の色が薄い人は、潜在的に「冷え」傾向があります。舌(べろ)の色も同じです。ヒートアップしない体質なので粘膜の赤みも薄いわけです。
 なぜ舌かというと、「外から見える唯一の内臓」だからです。舌だけ色が薄いなんて言うことはありえません。舌の色が薄いならば、つながっている咽の色も薄いはずです。咽につながっているほかの部分も、やはり薄いはずです。さらに・・・。つまり、全身の内臓の状態を舌は反映しているわけです。
 

(2)熱(炎症)傾向の人の特徴

・暑がり
・よくのどが渇く
・冷たい飲み物を好む
・声が大きい
・尿の色が濃い
・便やガスが臭い
・舌(べろ)の色が赤い

 熱(炎症)は身体をヒートアップさせます。機能の過亢進です。ふだんから声の大きい人は、熱のこもりやすい体質に多いようです。尿や舌の色が濃いのは、「寒」傾向の人とはちょうど反対です。身体に熱がこもりやすい人は、腸の中も同じように熱がこもっています。温度が上がれば臭気は強くなります。便やガスが臭いのは、このためです。もちろん体臭も強くなります。
 一見、熱傾向の人は元気そうですが、食欲も過亢進気味になりますから、成人病には気をつけなくてはなりません。
 

 寒熱の傾向がわかれば、日常の食生活でも役に立ちます。食べ物には、身体を温める食材もあれば、冷やす食材もあります。「寒」傾向の人は温める食材を多く摂り、冷やす食材はそこそこにすることが大切です。「熱」傾向の方は、もちろん反対です。

(2000年5月)
 

身体を冷やす食材、温める食材

 体質にあった食生活は大切です。寒熱(かんねつ)という漢方の考え方をもとに身近な食材を分類してみましょう。

(1)身体を冷やす食材
 

お刺身 薬味によって、冷えすぎるのを予防しています。
豆腐 実は、豆腐も冷やします。ショウガやネギと一緒にどうぞ。
生野菜のサラダ 冷え症の人のダイエットにはよくありません。
ウリの類 キュウリ、スイカ、メロンは同じウリ科です。夏の食材です。
白砂糖 黒砂糖と比較した場合、白砂糖は身体を冷やします。
 
(2)身体を温める食材
 
香辛料 冷え症の人には○、暑がりの人はほどほどに。
お酒 お酒は全般に温めますが、ビールだけは別です。ビールは身体を冷やします。
温める野菜 ニンジン、ネギ、カボチャは、体を温めます。
温める果物 果物は、ほとんど身体を冷やしますが、モモとサクランボは身体を温めます。
肉類 馬肉だけは身体を冷やします。
黒砂糖 白砂糖と比較した場合。
 

 子供に冷え症は、あまり見かけません。だいたい暑がりです。身体を温めるニンジンやネギが嫌いな子が多いようです。身体を冷やすキュウリは、わりと好んで食べます。
 

(2000年5月)
 

虚実(きょじつ)

 虚実(きょじつ)という考え方も、漢方では大切な概念です。寒熱(かんねつ)と同じように、少し知っておけば、けっこう役に立ちます。
 「虚(きょ)」とは、身体に本来あるべきものが「不足」している状態のことです。「実(じつ)」とは、身体にとって不必要なものがある状態です。つまり、「余分」なものが身体の中にあることです。漢方では「足りない」ときには「補う」タイプの薬を使います。「余分」なものがあるときは、それを「排泄」するタイプの薬を使うわけです。

(1)虚の状態とは

・元気が足りない(栄養不良、肉体疲労)
・血液が足りない(貧血)
・体重が足りない(やせ)
・ホルモンが足りない(更年期)
・血圧が足りない(低血圧)
・骨密度が足りない(老化)
・記憶力が足りない(疲れ、老化)
・しまりが足りない(胃下垂、脱肛、子宮脱)

 「しまりが足りない」とは、内臓などを支持しておく力が足りないために、下の方へ落ちてくることです。ほっぺたの筋肉にしまりがないと目尻が下がってくることも同じです。
 

(2)実の状態とは

余分な熱(発熱、炎症)
余分なばい菌(感染症)
余分な体重(肥満)
余分なガス(異常発酵)
余分な体液(鼻水、たん)
余分な血糖、コレステロール(老廃物)
余分なストレス(イライラ、うつうつ)

 「ストレス」だって余分だと体調不良をおこします。余分なストレスを取ってくれる便利な漢方薬があります。どうぞ、お近くの漢方薬局で聞いてみてください。「余分なストレスを取ってくれる漢方薬がほしいのですが・・・」。体質にあったものをチョイスしてくれるはずです。
 

(2000年5月)


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